<お役立ちメニュー>年齢以上に老けてしまっている印象を与える原因ブログ:2023/03/21
終戦直後、
わたくしたち一家は、谷中の3軒長屋で暮らしていた。
詳しく言えば、
お母さんと姉とわたくしの3人で、
お父さんは南方戦線からまだ戻っていなかった。
当時の午前中食は、
どの家もたいてい芋粥だった。
お粥の部分は姉とわたくしが食べ、
お母さんはいつもサツマイモの部分を拾って食べていた。
まだ小さかったわたくしは、
お母さんはサツマイモが好きなのだと思っていた。
そして12時のご馳走は焼芋である。
外でチャンバラごっこをしていたわたくしは、
今まさに新撰組と切り結んでいる最中に、
「やきいもー」という焼芋屋の声がする。
そうなるともう新撰組もない。
わたくしはあわてて家に駆け込み、
無駄でも「焼芋買ってくれ!」とお母さんに頼むのであった。
サツマイモばかり食べている連日なのに、
なんでまた焼芋かと言えば、
わたくしたちが普段食べていたサツマイモは
「タイハク」とかいう水っぽいものなのだが、
焼芋屋の芋はホントに美味い「キントキ」だったのである。
そんなわけで、
姉とわたくしはたまに焼芋にありつけるのだが、
お母さんは決して焼芋を食べることはなかった。
いつも「焼芋は胸が焼ける」「今日は食欲不振」と言って、
焼芋にかぶりつくわたくしたちを見てただ笑っているだけであった。
しばらくすると、
お米もちゃんと配給になり、
菓子パンだって何時間も並べば買えるようになった。
やがて、お父さんも南方戦線から帰って来て
わたくしたちは長屋を引っ越し、サツマイモなど長屋時代の思い出は
遥か遠いものとなっていった。
姉とわたくしにお粥を食べさせようとして、
自分はサツマイモの部分を食べていたお母さん。
そのくせ、お金がないためか自分だけ焼芋を食べなかったお母さん。
お母さんは一体、サツマイモが好きだったのか嫌いだったのか…
今年の中秋の名月の日には、
お母さんの仏前に焼芋でも供えようかとわたくしは思う。
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